
┃台湾三大節句のひとつ「中秋節」
2026年の中秋節は、9月25日(金)。旧暦8月15日にあたる中秋節は、春節、端午節と並ぶ台湾三大節句のひとつで、家族や親しい人が集まり、秋の月を眺めながら過ごす大切な日です。
日本にも、十五夜に月を眺め、月見団子やすすきを供える風習がありますが、台湾の中秋節はもう少し「人が集まること」に重きが置かれています。月餅や文旦を分け合い、家族や友人と食卓を囲み、夜にはバーベキューを楽しむ。街のあちらこちらに、人が集う気配が生まれるのも台湾の中秋節らしい風景です。
中秋節を語るとき、台湾でよく使われるのが「團圓(団円)」という言葉です。離れて暮らす家族が帰り、同じ食卓を囲むこと。そして、丸い月のように人と人との縁がひとつにつながること。中秋節の満月には、そんな願いも重ねられてきました。
┃月を見上げ、人が集う「團圓」の夜
旧暦8月15日は、秋のちょうど中頃にあたります。農作物の収穫を迎える季節でもあり、古くから月に感謝を捧げ、実りを祝う時間として大切にされてきました。
中秋節の象徴である満月は、その丸い形から「円満」や「団らん」を連想させます。たとえ離れた場所にいても、同じ月を見上げることができる。月を介して家族や大切な人を思う感覚は、日本の十五夜にもどこか通じるものがあります。
台湾では中秋節が近づくと、月餅や文旦が店頭に並び、企業や親しい人同士で贈りものを交わす光景も増えていきます。春節の華やかさとはまた違う、少し落ち着いた秋の節目。日中にはまだ暑さが残る台湾でも、この頃になると季節が少しずつ次へ向かっていることを感じさせてくれます。
┃月餅を「贈る、分ける、囲む」
中秋節の食べものといえば、やはり月餅です。丸い形は満月を表すと同時に、家族の団らんや円満の象徴ともされ、中秋節には欠かせない存在となっています。
台湾では、昔ながらの月餅だけでなく、緑豆餡を使った「綠豆椪(リュードウポン)」や、塩漬け卵の黄身を包んだ「蛋黃酥(ダンファンスー)」なども、この季節に多く見かけます。さっくりと幾重にも重なる生地、餡のやさしい甘さ、そこに塩気のある卵黄を合わせるなど、日本の和菓子とはまた違う、甘味と塩味の重なりも台湾菓子のおもしろさです。
近年では、伝統的な餡だけでなく、お茶や果物、チョコレートなどを取り入れたものも増え、ホテルや菓子店が趣向を凝らした中秋節限定のギフトを発表するのも、この季節ならではの風景になりました。美しい箱に詰められた月餅を家族や友人、仕事でお世話になった方へ贈ることも、台湾の中秋節文化のひとつです。
一つの月餅を切り分け、みんなで少しずつ味わう。その姿にも、「團圓」という中秋節の考え方がよく表れているように思います。
┃月を見ながらバーベキュー。台湾独特の「中秋烤肉」

台湾の中秋節を初めて知る日本人が、少し驚くかもしれないのがバーベキューです。中秋節が近づくと、家族や友人が集まり、屋外で肉や海鮮、野菜などを焼いて楽しむ「中秋烤肉」が各地で見られます。
実は、このバーベキュー文化は何百年も続く伝統行事というわけではありません。台湾で中秋節のバーベキューが広がったのは1980年代頃とされ、当時の焼肉醤のテレビCMや、スーパーなどで行われた中秋節向けの販促も、その定着を後押ししたといわれています。
今ではすっかり中秋節の風景のひとつとなり、夜になると家族や友人が集まり、月を眺めながら食事を楽しみます。肉や海鮮だけでなく、台湾ソーセージや練り物、トウモロコシなど、焼くものは家庭によってさまざま。焼いた肉を食パンにはさんで食べるスタイルも見られ、日本のBBQとの違いを探してみるのもおもしろいところです。
古くからの「月を囲んで人が集う」という習慣に、現代になってバーベキューという新しい楽しみ方が加わった。伝統をそのまま守るだけではなく、その時代の暮らしに合わせながら楽しみ方を変えていくところにも、台湾らしさを感じます。
┃中秋節のもうひとつの主役「文旦」
月餅と並んで、中秋節の食卓によく登場するのが文旦です。台湾ではちょうど中秋節の頃に旬を迎え、店頭には洋ナシのような少し縦長の形をした文旦がたくさん並びます。
文旦を含む柚子は中国語で「柚子(ヨウズ)」と呼ばれ、「子どもを守る」という意味につながる「佑子」と音が似ていることから、縁起のよい果物としても親しまれてきました。丸く大きな月餅と、みずみずしい文旦が並ぶ光景は、台湾の中秋節を象徴する食卓のひとつです。
そして台湾では、文旦を食べ終えたあと、その厚い皮を帽子のように子どもの頭にかぶせる姿を見かけることもあります。子どもの無事や成長を願う意味と結びつけて語られる風習ですが、今では家族で楽しむ中秋節らしい遊びのひとつとして親しまれている面もあります。
旬の果物を味わいながら、その名前の響きにも吉祥の意味を見つける。台湾の行事を見ていると、食べものと言葉、人への願いが自然につながっていることに気づきます。
┃日本の十五夜と、台湾の中秋節
日本の十五夜と台湾の中秋節は、どちらも秋の月を眺める行事ですが、その過ごし方には少し違いがあります。日本では、すすきや月見団子を供え、静かに月を愛でる情景を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
一方の台湾では、月を眺めることと同じくらい、家族や友人が集まることが大切にされています。月餅を贈り合い、文旦を食べ、外ではバーベキューを囲む。日本の十五夜が月そのものの美しさを静かに楽しむ時間だとすれば、台湾の中秋節は、その月の下に大切な人たちが集まる時間、と表現すると少しわかりやすいかもしれません。
もちろん、過ごし方は家庭や世代によってさまざまです。それでも「同じ月を見ながら、大切な人を思う」という気持ちは、日本と台湾のどちらにも流れています。
2026年の中秋節は9月25日(金)。この夜は、台湾の人々が見上げている月に少しだけ思いを馳せながら、日本でも秋の夜空を眺めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
https://www.taipeinavi.com/special/80009602
https://kogetsu-an.shop/culture/2552/
https://www.arachina.com/festivals/mid-autumn-festival/mooncake.htm
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